--東の大陸・ラゼラル-- 5話
歩くことしばらく。御者が待っている村へとたどり着いた。
御者は少し酒を飲んで村人たちとすっかり打ち解けていたが、クレスが捕まったことを話したところ、みるみるうちに顔色が変わった。
そこから察するに、クレスは従者からも慕われていたのだ。
御者は自分もクレスの救出に加わると言って聞かなかったのだが、スイレンが説得し、なんとかシェンド伯領に戻ってもらうことになった。
さて、今イレイスとスイレンが居る村…ティシモ伯領とティーノ伯領の境から王都ラゼリアまでは街道を徒歩で2日ほど。
うまくいけばラゼリアに入る前にクレスを救出できるのではとスイレンは提案したのだが、イレイスはそれには首を横に振った。
相手はやり方は強引とは言え、公式な手順を踏んでクレスを捕らえたのだ。
にも関わらずこちらが奇襲をかけてクレスを救い出してしまえば、状況が悪くなるのはクレスの方だ。
故になんとか、裁判でクレスの無罪を証明するか相手側の罪を暴くかをしなければならないのだ。
イレイスとスイレンは御者を帰した後、酒場で食事を取ることにした。ちなみに今はどうがんばってもクレスと接触することは不可能なので、ついでに体を休めるために宿を取ることにした。明日からまた体を酷使することになるのだ。
イレイスもスイレンも魔法使いなので、どこかの黒づくめの青年のように体を張るのは不得意なのだ。休めるうちに休んでおかねば体がもたない。
イレイスもスイレンもどこかのフードファイターとは違い、平均に比べても少食だ。簡単なパンとスープのセットと食後のお茶で終了だ。
「小さいお店ですけど、ご飯おいしかったですね」
スイレンはハンカチで口元をぬぐって、満腹の意を示すため息をひとつつき……イレイスの行動に目を丸くした。
「そうだな。まあ、スナ王国の宮廷料理には及ばないが…どうした?」
イレイスはスイレンがこちらを凝視して動きを止めているのを見て尋ねたのだが、スイレンは「何でもないです」と言い、そっと視線を逸らした。
その間にもイレイスは紅茶にシュガーポットの中の砂糖をほぼ全部入れ、一口飲んでみた。…うん、いい味だ。
自分が味を調えた紅茶の出来に満足したイレイスは周囲の客の会話に聞き耳を立てつつそれをゆっくりと啜った。
すると……
「あーあ、センパーイ、絶対無理ですってー。結局何も出なかったでしょー?」
と言うのは、まだ若い女性だ。勿論、スイレンの声ではない。
「イストは諦めるのが早すぎるんだよ。あそこには絶対何かあるって。明日も洗ってみるから」
こちらは女性よりは年上のようだが、まだ若い男の声だ。
「えー…ああーもう、ティーノ伯家の調査なんかやめて早くイシュネーに帰りたい……」
イレイスはふむ、と呟き動きを止め、怪しまれない程度に声が会話の主を見やる。
そう離れていないテーブルに魔法使い倫理委員会の制服を着た若い男女が向かい合って食事をしているのが見えた。
「…あら?あの方は確か…リズさんの……」
「知り合いか?」
「女性の方、確かリズさんがイシュラントに向かう夜行馬車で一緒だった方ですね。確か名前は…イスト……」
イレイスの視線を追ったスイレンが小声でそう言った。
「あぁ、そういえばブロウも言っていたような気がするな……」
イレイスもスイレンもイストのことを直接知っているわけではないが、スイレンは彼女の姿を借りてリズに接触を試みたことがあったし、
イレイスはブロウ経由で話を聞いたことがあった。それよりも、今「ティーノ伯家の調査」と言ったことに対しイレイスは反応した。
おもむろに席を立つとつかつかとその2人のもとへと歩き出した。
「え!?イレイスさん!?」
スイレンはついてこなくてもいいのについてきた。
「単刀直入に聞くがね、何故ティーノ伯家の調査など行っているのかね?」
イレイスは面倒な言葉は一切端折って二人の男女に問いかけた。あまりに唐突すぎて声をかけられた二人はぽかーんとしてイレイスを見上げて……
いたのは一瞬の話、男性の方が女性の方に咎めるような視線を送った後、肩をすくめてみせた。
「申し訳ありません。業務上の秘密となりますのでお答えしかねますね」
「ふむ、ならばそれでも構わないのだが…行き詰っている捜査のヒントになるであろう物を私は持っている。と言えばそれでもつっぱねられるかね?」
「イレイスさん、そんな物持っているんですか?」
スイレンが疑問に思うのも無理はない。イレイスやスイレンがティーノ伯爵の屋敷を訪れた時も特に収穫らしい収穫は得られなかったのだ。
しかしイレイスは意味深に微笑んでみせると、一本の幅広のリボンを取り出した。確かそれはフィリンツの襟元に結ばれていたリボンタイだったはずだ。
「これにはセットメモリーの魔法がかけられていて、そちらにとってもけして無益な情報は入っていないと思うがね」
男はしばらく考えた後……小さく頷いた。
「私は魔法使い倫理委員会遵法局摘発部取締課の委員、カルツ=プロキス。こっちは私の後輩のイスト=ディンブラです。その内容は我々の部屋で…」
カルツとイストが手配していた部屋は…おそらく最低ランクだ。
狭い部屋にベッドがふたつ押し込められていて、サイドテーブルが間になんとか挟まっている状態である。天下の魔法使い倫理委員会が情けなくなるな。とイレイスが茶化すと、平委員はこんなもんだ。という答えが返ってきた。なんとも涙ぐましい話である。
カルツとイストはティーノ伯爵の屋敷が突然襲撃に遭い、屋敷自体が破壊されつくしてしまったことについて魔法が絡むなんらかの事件があったのではないかという考えで上司からの命令で調査を行っていたそうだ。しかし結果は時間が経ちすぎて何もわからず、途方に暮れていたところだった。
イレイスが交渉のために持ち出したフィリンツのリボンタイには、セットメモリーなる魔法…物に周囲で起こった事象を記録させる魔法が施されている。それにはレイオーサと鉢合わせしたこと、そこで魔法を使った戦いが繰り広げられたこと、更にレイオーサがフィリンツの記憶を魔法を使って覗き見たことまで記録されていた。
「ひゃはー、これすごくないですか!?これでレイオーサとかいう魔法使いをしょっぴけば万事解決イシュネーに帰れますね!」
と、イストは喜んだのだが…
「確かに、フィリンツ殿に対しては断罪の余地があるけれど…我々の目的からは少し逸れますね。ですが重要な情報です。ご協力感謝します」
カルツに否定され、ふくれっつらになった。
「で、こちらとしても少し頼みごとがあってだね。聞いてもらえるかね」
「そうですね。こちらばかりいい目に遭うというのも不平等です。お伺いしましょう」
「我々はシェンド伯爵クレス殿を無実の罪から救出する任があってだね。そのために力を貸してもらいたいんだが」
「…そうですね……そこまで事が大きくなると我々では役不足ですね。上司にかけあってみましょう」
「ありがとうございます」
スイレンがぺこりと頭を下げる。最終的に、カルツもイストもラゼリアに赴くことになり、改めてラゼリアで会うことになった。
一方、その頃。シェンド伯爵領を出発して、ラゼリアへと向かっていくリズ一行。目的は、イレイスとの合流だ。
「うーん、今のところ、変わった様子も無いけど……本当に面割れたの?」
獣道だけのうっそうと茂った森の中、ルートが先頭になって歩いていた。
もちろん、馬車などを使えばあっという間にいけるのではあろうが、ブロウのこともあり、あまり表立って動くわけには行かなくなってしまったのだ。
「追いかけてくる人がいるとしても、もう少し掛かるとおもいますよ。」
シェンド伯爵地から、国王直轄地であるラゼリアは少し距離がある。
二つの間にあるティシモ伯領を超えないといけないので、身を隠しながらだとかなり時間が掛かる。
「もう少し、ってどのくらい?」
リズの質問に、セツナが指折りカウントしながら、んー、と声をあげて考える。
「長くて半日程度。早くてあと半時間程度ですね。」
「……ぜんぜん少しじゃないじゃん!」
「まあでも、此方から敵地に向かってるわけですし、もう少し早いかもしれませんが。」
セツナがそういうと、ルートの足がぴたりと止まる。
「ルート、どうかしたのか?」
ルートの直ぐ後ろを歩いていたブロウも立ち止まる。ブロウの問いには答えずルートは人差し指を一本立てて口元に当てた。
そしてしばらく耳をすませ―…うん、と一つうなずいた。
「場所的には賊さんが住んでいてもおかしくないと思うけどさ、―…何人か潜んでるみたいだけど、どうする?」
ささやくように、ルートが告げる。
「どうする?って、潜まれている時点で狙われてるよなぁ……」
考えなければいけないのは、相手だ。もしこれが盗賊ならば軽く追い払ってしまえばいいのだが、賞金稼ぎとかなら話は別だ。
何故なら相手の強さが違う。前者は集団の弱さをつけばいいが、後者は集団の強さをいかしてくる。要するに―…戦闘のプロを相手にするのだ。
「そうですねぇ、気がついて無いフリでもいいんですが、さっさと登場願います?」
そんなにのんびりしてるわけでもないですし、とセツナが言う。
「そーだな。……リズはセツナの後ろに居てくれよ。」
「う、うん。わかった。」
ブロウが腰につるした剣に手を当てる。
「―…いえ、此処はオレとルートだけで大丈夫ですよ。貴方はリズを護るのに専念してください。」
それを、セツナが手で制しながら、前へと出た。
「ぇ―…でも。」
「……たまには、オレだって動きたいので。」
セツナが小さく笑うと、ブロウは一つわかったと返事をし、リズの傍になるべく相手に悟られないように動く。同時に、セツナがルートに向かって目配せをする。ルートはその位置のまま二、三歩前に進み、くるりと周囲を見回した。
そしてリュックサックから小さなナイフのようなものを取り出すと、三本ほど奥にある木に投げつけた。
「そーんなんでかくれんぼのつもりぃ?子供の遊びにしても手ぇ抜きすぎじゃない?」
挑発するように、声を投げかける。しばらく静寂が続いていたものの、やがてひとつの舌打ちと共に一人の男が姿を現した。
「やれやれ……子供連れだと思ったんだけどよ……意外とやるじゃねぇか。」
その男は、盗賊にしては装備がえらくきっちりしており、只者ではなさそうだ。
「んー、できれば子供相手って事で見なかったことにして欲しいな、ダメ?」
直ぐに相手が面倒くさそう、と判断したルートがねだるように言う。
「悪いけどよ、そーもいかねぇんだ。ま、俺らが狙ってるそこの黒いのを渡すってんなら手は出さねぇけど。」
男は、腰に刺した剣を抜き、ルートの後ろに向ける。きらりと輝く鋼のきらめきが、ブロウを指していた。
「だってさ、どうする?」
ルートがくるりと振り向き、セツナに質問を投げかける。
「てきとーに断っといてください。理由はまあ、適当に。」
セツナはルートに返す。ルートはわかったー、と間延びした返事をして男に向き直る。
「今日の小麦粉占いでラッキーパーソンが黒い人だからイヤだってさ。」
「何なんだよ、その理由……」
ルートの言い分に、ブロウが苦笑する。もちろん、直ぐ傍でやり取りをしていたのだから男に筒抜けなわけで。
しかも小さな声でもなんでもなく、というかむしろ若干声を張り上げていた。
「なるほどね。でも―…悪いけど、この状況は覆せないぜ?」
特に気を悪くしたわけでもなく、男が言う。
そう―…初めから、森には複数の人間の気配はしていた。隠れているのが見つかったからといって、潜伏の効果がないわけではない。
「遠距離からの狙い撃ち、か。」
ブロウが周囲の気配を探って、相手の意図を読み取る。数にして六にも満たないだろうが、明らかに此方を狙っているのがわかる。
「女子供相手に残虐非道で極悪じゃない?」
ぶぅ、とルートがむくれる。
「ま、そういうこった。わかったなら、大人しく―……」
「だが断るッ!」
男が言いかけて、ルートがさえぎる。それと同時にリュックサックから小さなナイフのようなものを一本の木に向かって投げつけた。
直後、鈍い音と共に男の悲鳴、それと木から人が落ちる音。
「悪いですが、ぶっちゃけ邪魔なんで退いていただけますか?」
にこり、とセツナが笑いかける。しかしその笑顔は時折見せる穏やかなものではなく、ひたすらに冷たかった。
「ね、ねぇ、今の人、直撃だったんじゃない?」
「大丈夫!狙ったのは太ももらへんだから!あと馬鹿は丈夫って相場が決まってるし。」
「頼むから程々にしてくれよ。今のところコッチが悪人なんだし……」
リズが少しだけ慌てたように言うが、ルートはびし、と親指を立ててみせる。そんなルートに慣れているブロウはどこか呆れ顔だ。
「おいおい……いいのかよ?下手な事すると、あんたらまで余計な罪状つくぞ?」
そういいながら、男は剣を構える。先ほどまでのどこか力を抜いた感じではなく、今にも襲い掛かりそうな殺気がある。
「いーい、僕の上から数えて2番目の信条を教えてあげる。」
ルートもリュックサックに手を入れ、両手にナイフのようなものを構える。
いつものにこにことした表情からは微塵も感じられないほどの、気迫がそこにあった。
「死人に口なし!という事で死ねぇえええ!!!」
「うわもうコッチが悪人確定だッ!!!」
ブロウが思わず突っ込みを入れるが、それで止まるルートではない。
自らを鼓舞するためなのかかんなのか、雄たけびを上げながら男に向かって一直線に走りだす。
男は一瞬だけ眉をひそめ―…そして飛び掛ってきたルートを難なく剣ではじく。
「まっだまだぁ!」
ルートは弾かれた勢いで後ろに滑るように着地。しかしそれだけではおわらず、そのまま両手に持っていたナイフのようなものを投擲。
「……甘いッ!」
男はナイフもやすやすと弾く。直後、どこかに潜んでいたらしい男の仲間が一斉に矢をルートに向かって放ってきた。
「ル、ルート!」
リズがルートの名を叫ぶ。
ブロウは距離があるので手も足も出せず。そしてセツナに至ってはまだ魔法の詠唱中なのか、小声で何かを呟き続けている。
直後ざくざく、と連続して矢がルートの小さな体に突き刺さる。マトモに全て命中したのだ。コレで生きている人間は居ない―…そう、男は思ったのだ。
「甘いのは、どーっちだ?」
そう、響いたのは男の背後。
男が先ほどルートが着地したところを眼で追う。そこには、十本には満たない量の矢が突き刺さった大きな丸太が一本あるだけだ。
「……ふ。なるほどな。けどよ―…その位置からでも、矢は―…射られる配置してあるんだが。」
男は、背後をとられたというのになおも表情を崩さない。それも、背後の仲間を信じているからだろう。
「配置をしていても、射れるかどうかが問題ですよね?」
セツナが、くすりと微笑む。
「どういうことだ?」
訝しげな顔をする男に対して、セツナは続ける。
「今のルートへの攻撃で、大体位置は把握させていただきました。……詰み、ですよ。」
不意に、風が周囲に凪ぐ。木々がざわざわと音を立てるが、その影は全く微動だにしていない。
「え?え?セツナ、今まで何の魔法唱えてたの?」
リズはそれに気づかずきょろきょろと辺りを見回し相手の姿を探すものの、いくら見回したところで人影は全く視界に入らない。
「……お前―…もしかして……」
男の顔が、わずかに歪んだ。それは、わずかにおびえが含まれている。
「位置的に優位に立ったつもりでしょうが、オレを前にして影に潜むなんて愚の骨頂ですよ?」
瞬間、風は既に止んでいるのに周囲の木々がいっせいにざわめく。いや、木がざわめいているのではない。
動いているのはその後ろ、影だ。
「ちッ―…この、忌みー…ぐぁッ!?」
「それ以上せっちゃんの悪口を言うなら、有無なくぶっ刺すよ?」
男が言いかけた言葉を、ルートは背中を浅く刺して止める。セツナはわずかに顔をしかめたが、それも一瞬。
「30秒さしあげます。とっとと手下を離れさせなさい。」
直後、セツナが何かを小さく唱える。それと同時に、男は腕を高く伸ばし、周囲に何らかの合図を出した。
木々のざわめきと間違えそうなほどわずかな音の足音が、周囲に響く。
「はぁー…まいったまいった。どうりで上がやたら高額の懸賞金かけるはずだ。
納得したぜ……でも、俺を退けたとしても―…いや、俺に従ってとっととお前らだけでも逃げりゃよかったのかもな。」
男はやれやれとばかりに息を吐き、抜いていた剣をしまう。
そして、そのままどこかへと歩き出した。背中に血が滲んでいたが、後で処置をしておかなくても止まる量だ。
「……ふう、やれやれ、楽勝だったね。」
男の背後に回っていたルートが笑顔を浮かべて言う。しかし、その顔にはどこか妙な点があった。というか額に。
「ルート!額、額!つーかデコーッ!!ナニソレナニソレ、痛くないの!?」
リズが大声を出してルートの額に指を刺す。え、とルートが眼を向けると、そこには矢が一本突き刺さっていた。
「あー。全部避け切れなかったみたーい。」
てへ、と悪戯っぽく笑いながら握りこぶしでこつんと米神あたりを叩くが、乙女チックなその行動もイカした矢というアクセサリーのお陰で完全にB級ホラーに見える不思議。
「な、なんか矢鴨みたいだな、それ……」
「どう、ぶろりん?将来的に流行ると思うよー、主に戦場とかで。」
「ですがそれですと身に着けた相手は確実にお亡くなりになりますから、呪いのアイテムですね。」
しかし慌てるリズをよそに、ブロウもセツナもどこか間の抜けたような会話しかしない。
致命傷ともとれる箇所の矢にもかかわらず、ルートもいつものように笑っている。
「……あのさー、りずりず、一応言っとくけど、普通こうされたら血とか出るよねー?」
「え?ええ?え……あ。」
ルートはそういって刺さった矢の箇所を指差す。そこからは、言葉どおり血が一滴としてながれていない。
「前にも言ったでしょー、僕、普通の人とかとちがうんだってば。」
そういえば、大食い大会のときもそんな事を言っていたような、とリズは思い出す。
「……ちょっとのんびりしすぎたかもしれませんね。」
不意に、セツナがそんな声を上げた。ブロウもハッとしたような顔つきになる。
ルートは額に刺さったままの矢を抜くと、無造作に捨てた。
「だな。もうちょっと遅いかなって思ったんだけど……もしかしたら場所を探られてたのかもしれない。」
ブロウがセツナに同意するような声を上げたとき、がちゃがちゃと鎧がこすれあう音が響く。
視界の端では、どこかで見たことのある紋章をつけた兵士が十数人、此方へと走ってきていた。
「うーん、でも考えようによってはチャンスかも。このまま連行されたほうが楽につけるかもね。」
ルートはあくまでも気楽にそういう。国の兵士が相手では、先ほどと同じように戦うわけにはいかないのだ。それこそ別の罪状がついてしまうため。
「……御免、なんか、やっぱりガッツリ巻き込んじまって。」
「いいですよ。別に。リズだって社会勉強の一環になりますしね?」
「……アタシ社会勉強で前科付いちゃうのは流石にやだなぁ……」
等といいながら、4人はその場で立ち止まったままだった。そしてその直後、兵士の怒声が森の中へ響き渡ったのだった―…
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